(質問要旨)
3 伝統文化芸術分野への支援について
文化庁の京都移転は、明治以来初となる中央省庁の地方移転であり、地方創生の観点に立った文化行政の推進とともに、コロナ禍で得られた教訓として、東京一極集中による感染症の拡大と社会活動の停滞回避の点からも成功させなければならない。文化庁の移転を契機とした伝統文化、芸術分野の振興、継承、発展は必須であるため、活動や生活に窮している活動家や事業者等への支援が重要と考えるが、伝統文化芸術分野の支援に関し、次の諸点について、知事の所見を伺いたい。
(1)本府は伝統工芸分野や文化芸術分野でのコロナ禍による落ち込みに対し、様々な支援を行っているが、両分野における、WITHコロナ社会での支援とPOSTコロナ社会での振興に向けた具体的な施策はどうか。
(2)文化財保存等に必要となる国産漆の生産を継承するため、起業家達が右京区京北で漆の植樹を始めたとの新聞報道があった。文化財を守り伝えるには、文化財への直接の支援だけでは難しく、漆をはじめ、和紙や檜皮などの生産者への支援や生産の仕組みの構築、技術的支援など、幅広い伝統文化芸術の裾野産業への支援が必要と考えるがどうか。
(答弁)文化スポーツ部、商工労働観光部、教育委員会
次に、伝統産業や文化芸術の分野への支援についてでございます。
伝統産業や文化芸術は京都の魅力であり、活力の源泉となっており、これをさらに振興し、継承・発展させていくことは大変重要だと考えております。
そのため、感染拡大の初期から、それぞれの活動が継続できることを第一に、職人の仕事づくりに直結する伝統工芸品の購入支援や、文化芸術活動継続のための支援を行ってまいりました。
また、先ほど申し上げました「「観光・伝統・食関連」産業連携事業緊急支援費」や、公演時間や入場者数の制限により、大きな影響を受けている舞台芸術団体等が行う制作活動等に対して支援を行う「WITHコロナ文化活動支援事業費」について、先日御議決をいただいたところであり、引き続き、伝統産業や文化芸術関係者の実状に応じて活動が継続できるよう支援してまいりたいと考えております。
さらに、POSTコロナ社会を見据えては、伝統産業や文化芸術の市場を活性化させ、継続的な活動基盤を強化することが必要であると考えております。
そのため、今議会には、伝統産業分野では、商品開発力や市場開拓力の向上、ものづくりシステムの再構築、そして基盤となる人づくりまで、産地の抜本的な構造改革を行うための支援に必要な予算案を、文化芸術分野では国際的なアートフェアの開催により国内外の美術関係者と京都の作家とのマッチングなど、作家のステップアップにつながるマーケットの開拓に必要な予算案を提案しております。
今後とも京都が誇る伝統産業や文化芸術の継承・発展のため、活動基盤の強化に向け取り組んでまいりたいと考えております。
次に、文化財の保存・継承に必要となる裾野産業への支援についてでございます。
文化財の保存・継承にかかる技能や原材料は、文化財修復事業だけでは産業としては成り立たず、京都の幅広い伝統産業や伝統文化の基盤があってはじめて成り立つものでございます。
例えば、先日、ユネスコ無形文化遺産に登録されました「伝統建築工匠(こうしょう)の技」は、文化財だけでなく一般の木造建造物の仕事が確保されることで、瓦、左官、畳などの技術の継承が可能となります。
また、議員ご指摘の漆や和紙、檜皮(ひわだ)をはじめ、
畳表(たたみおもて)、筆、刷毛、金箔など文化財の修理に必要な多くの原材料や道具類は、伝統産業の需要が減少する中で、その確保が年々困難になってきております。
したがって、これらの裾野産業を支えていくためには、基盤となる伝統産業の活性化や伝統文化の振興を図ることが重要であり、その上で文化財の修理の仕事を増やしていく必要がございます。
伝統産業につきましては、消費者の価値観の変化等に対応できず売上や生産量が減少し続けていることから、先ほど申し上げましたように抜本的な構造改革を新たに進めてまいります。
また、伝統文化につきましては、地域の伝統芸能など本物に触れる機会の拡充を図るとともに、VRなどの先端技術も活用してオンラインで子どもたちが体験する機会を設けるなど、その魅力の発信強化に取り組んでまいります。
さらに、文化財の修理につきましては、国宝・重要文化財に加え、暫定登録文化財制度の創設による事業量の確保に努めているほか、観光など文化財の多方面な活用を推進し、それによって生み出された資金を文化財の保存・継承に活用する好循環の創出を図っているところであります。
今後とも、伝統産業や伝統文化の振興を図るため、幅広い視野で関連部局が連携し、これらの裾野産業を支援してまいりたいと考えております。